Ryo’z on Guitarへようこそ。
本日は、1stミニアルバム「BAD COMMUNICATION」の2曲目に収録されている楽曲、
「OUT OF THE RAIN -OFF THE LOCK STYLE-」
を、自由に正直に語る。
新曲ではない?
全編にわたりシリアスな雰囲気が漂うものの、非常にキャッチーなサビ(メロディー)が印象的で、且つ、リズムがハネていることで、自然と踊りだしたくなるようなナンバー。
実は本曲、曲名は異なるが、1stアルバム「B’z」の8曲目に収録されている「君を今抱きたい」を英詞に変更し、打ち込みとサンプリングを全面に打ち出すことで、より一層ダンサブルにリメイクした別バージョンである。
初めて本曲を聴いた当時は、新曲が収録されているものと思っていたため、まさかの「君を今抱きたい」だったことに驚いたものだ。
(原曲については、以下を別途参照いただきたい。)
【B’z】「君を今抱きたい」を、自由に正直に語る。
実験的要素
原曲のシリアスな雰囲気を損なうことなくリメイクされている本曲には、実に様々な実験的要素が詰め込まれている。
1st、2ndとシングル・アルバムをリリースするも、なかなか鳴かず飛ばずであった当時のB’z。
そんな初々しい頃のB’zが、やりたい事をやりたい放題に、アクセル全開のノンブレーキで取り入れたとも思えるような自由な作風は、ヒットを度外視しているとも言えるが、意外にも今後のヒットに繋がる結果となった。
(たしかにここまで振り切ってくれると、聴いている方も清々しくなるが、初めて本曲を聴いた当時はかなり戸惑ったことを覚えている。)
それでは、いくつかの実験的要素について語っていこう。
・英詞
現在では当たり前のような英詞も、まだまだ鳴かず飛ばずであった当時のB’zとしては、ヒットに向けた実験的要素の一つだったと思われる。
今でこそB’zの楽曲における英詞作品に違和感を持つことはなくなったが、やはり初めて英詞作品の本曲を聴いた時には違和感を持ったものだ。
(B’zの二人は英語が堪能であり、現在までに英詞の作品を数々リリースしている。)
ちなみに、原曲のサビセクションでは英詞がふんだんに使われていたため、意外にも自然と聴くことができる。
(デビュー間もなく作詞に不慣れだった稲葉さんは、日本語よりも英詞を多用していた。)
・曲名
冒頭でも触れたとおり、曲名だけを見ると新曲にも思えてしまうが、蓋を開ければ、まさかのリメイクした別バージョンであって、大胆にも曲名を変えてしまうという驚きの手法。
本人達はどう思っているか定かではないが、原曲の曲名を直訳せずに付けるところも実験的要素の一つだと思える。
(たしかに冷静に確認すると、原曲の歌詞の一部から引用しており、原曲の姿は残している。また、洋楽においても邦題がまったく異なる意味で訳されていることが多々あるため、ごくごく自然なことであるとも判断できるのだが・・・。)
私のように、新曲ではなかったことに驚いた方もいたのではないだろうか。
・イントロ
本曲で最も大胆な実験的要素と言えるのがイントロである。
驚くべきことに、本曲におけるイントロの収録時間はB’zとしては異例の長さを誇る「2分13秒」。
そして、何よりも驚きなのが、そのイントロの構成である。
その驚きの構成は、イントロというよりもカラオケに近い。
イントロと思えるセクションが終わり稲葉さんが歌い始めるのかと思いきや、まさかの歌が入らないカラオケ状態のメロセクションとサビセクションがそのまま流れ続ける。
(誰しもが初めて本曲を聴いた際に、カラオケだと勘違いしたはずだ。)
そして、何事もなかったかのように2コーラス目とも思える位置から稲葉さんがボーカルイン。
不意打ちというか、もう、とりあえず驚きのなにものでもない。
しかし、この驚きのイントロの実験的な構成は、かつて松本さんがサポートメンバーとして在籍していた「TM NETWORK」が得意とする手法。
初期のB’zは、小室サウンドに色濃く影響されているが、サウンド意外の楽曲構成についても影響されていた訳である。
・収録時間
上記のイントロも起因し、楽曲自体の収録時間は「7分41秒」とB’zとしては異例の長さとなっている。
・クセのある音色
イントロから聴けるベースを中心に、シーケンス等の打ち込みに使われている音色にはかなりのクセがあり、なかなか攻めた音使いとなっている。
個別に聴くと違和感しか残らないようなサウンドばかりではあるが、それぞれが重なった際には、前衛的でダンサブルな心地よい響きとなり、シリアスな雰囲気の楽曲にもマッチしている。
・オーケストラ・ヒットの削除
原曲で取り入れられていたインパクト絶大なオーケストラ・ヒットが、大胆にも削除されているのである。
オーケストラ・ヒット好きの私としては非常に残念なところではあるが、オーケストラ・ヒットの代わりに取り入れられているブーミーなサウンドも気に入っているため、結果的には満足している。
・・・以上である。
このように数々の実験的要素がふんだんに盛り込まれているのだ。
その上で本曲を存分に楽しんでいただきたい。
イントロ
細かく刻まれるハイハット風のシーケンスと、弾け飛ぶようなサウンドに加工されたタム類から静かに始まり、そこに全編にわたり楽曲を支える独特なサウンドのベースが加わる。
バンドイン後は、松本さんのバッキングギターにも過激なアーミングプレーが加えられており、終始、聴き手は忙しく耳を傾ける必要がある。
そして、先述で語ったとおりのまさかの歌が入らないカラオケ状態のイントロが続く。
(余談ではあるが、大先輩の「TM NETWORK」による「Get Wild ’89」で聴ける同様のイントロ構成が絶品のカッコ良さなので、未聴の方はぜひとも聴いていただきたい。)
メロ
全て英詞であることにより、一層とスタイリッシュになっており、シリアスな楽曲の雰囲気がより洗練されている。
原曲とは違った良さがあり、バージョン違いとは言え、かなり新鮮な気持ちで楽しむことができる。
また、英詞に耳が行きがちだが、稲葉さんの歌唱レベルは格段に上がっており、表現力が増している。
薄れつつあるものの、まだまだハスキーな初期の稲葉さんの声質が心地よい。
サビ
先述のとおり、全て英詞ではあるものの、原曲においても英詞がふんだんに使われていたため、原曲と遜色なく聴くことができる。
そして、メロセクションと同様に英詞に耳が行きがちだが、原曲に比べて稲葉さんの高音域の伸びがスムーズになっており、シンガーとしての進化が垣間見える。
ギターソロ
ボリューム奏法でしっとりと始まり、ところどころアーミングを絡めながらも、ロングトーンが中心となっているため、全体的にメロディアスなギターソロとなっている。
数々の実験的要素が続く中、いっときのオアシスのように松本さんの安定したプレイが聴き手に安心感を与えてくれる。
そして、アウトロセクションでは、アドリブテイスト強めのギターソロを聴くことができる。
伸びのある気持ちの良いサウンドで、お得意のレガートな速弾きからチョーキング・ビブラート等、松本節を存分に楽しむことができる。
これにより、しっかりとした「B’z感」の余韻に浸りながら聴き終えることができるため、実験的要素が続く楽曲でも、良いバランスを保つことができているのだと感じる。
賛否両論
収録時間の長さ・クセのある音色・英詞等、数々の実験的要素が詰め込まれた本曲は、賛否両論、人により好みが大きく別れる。
実験的要素を抵抗なく受け入れて聴くことができる方から、抵抗感しか残らない方もいるだろう。
素直に本曲を楽しむためには、様々なジャンルの音楽を聴いて耳を肥やし、且つ、B’z=ハードロックという無駄な固定概念を捨てることが必要であり、人によってはかなりの時間を要するであろう。
しかし、本曲の実験的要素が耳に馴染んだ頃には、B’zファンとしてはもちろん、音楽を聴く際の楽しみ方が大きく広がる。
無理強いはしたくないのだが、やはりB’zの音楽性の広さを感じてもらうにはこの上ない作品であるため、言わずもがなB’zビギナーはもちろん、一般リスナーにも聴いていただきたい。
-OFF THE LOCK STYLE-と曲名にあるように、固定概念を捨てて、新たな扉の鍵を開けて、更にマインドを進化させよう。