Ryo’z on Guitarへようこそ。
本日は、3rdアルバム「BREAK THROUGH」の11曲目に収録されている楽曲、
「STARDUST TRAIN」
を、自由に正直に語る。
<はじめに>
このブログは、B’zの作品についてギタリストのRyo’zが、
・作品の概要 ・世界観 ・音楽性 ・聴きどころ ・稲葉さんのボーカル ・松本さんのギター ・イントロ、メロ、サビ、ギターソロ等のセクション毎の解説 等々・・・
B’zファンとして、ギタリストとして、そして音楽リスナーとして。
自身の経験を踏まえて解説、自由に考察しながら正直に語るブログです。
ビターな味わいに困惑
疾走感とシリアスで切ない緊張感が漂うテンポの速い楽曲に乗せて、禁断の愛「不倫」を歌うロックナンバー。
説明不要の隠れた名曲。
いや、すでに隠れきれていない存在となってしまった名曲だ。
B’zファンにおける楽曲投票では、常に上位にランクインする人気の楽曲であり、B’zファンで本楽曲を知らない方は「モグリ」だ。
残念ながら、B’zファンを名乗るにはあまりにも早すぎる。
未聴の方は今すぐに聴こう。
しかしながら、安心してほしい。
私自身、本楽曲を「認知」し、「名曲」と意識するまでに相当な時間が必要だった。
つまり、しばらくの間モグリだった。
いや、更に正直に言えば、現在でも絶大な「名曲感」を意識したことはないため、未だにモグリなのかもしれない。
もちろん「良い曲だな〜」と噛み締めながら聴いているわけだが、手放しで絶賛できるような楽曲であるとは思っていない。
これからB’zを聴き始めるビギナーや一般音楽リスナーに優先的に紹介するかと言えば、決してそんなことはない。
本楽曲の良さを理解するには、相当な時間が必要と感じているからだ。
本楽曲を初めて聴いたのは、10才にも満たない幼少期の頃であった。
その当時は歌詞の内容なんて意識せず、聴いているのは専ら楽曲のメロディーだけであった。
しかし、そのメロディーについても目立つような派手さがなく、地味な印象しか残らず、良さをまったく理解できなかった。
また、アルバムの最後に収録されているということもあり、しばらく聴かない期間が続いた。
そして、次に記憶しているのが、ギターを弾き始めた10代の頃。
アルバムを流し聴き続け、気がつけば最後の収録曲である本曲に。
相変わらず歌詞には耳を傾けず、メロディーのみを聴いていた。
すると、「あれ?割と良い曲じゃね?」と、じんわり思い始めた。
その後、20代になり様々な酸いも甘いも味わい始めた頃、やっと歌詞に耳を傾けるようになった。
「あれ?もしかしてこれって訳あり?」と、急に楽曲がビターな味わいに変化し、困惑したことを覚えている。
そして、30代となった現在。
ビールやコーヒーと同様に、どこか癖になる魅力的なビター味に、年々ハマっていることに気が付いた。
年齢を増すごとに、歌詞の内容に共感できたり、地味に思えたメロディーが、歌詞の切なくも儚ない美しい絶妙な世界感を表現しているように思えるようになっていく。
しかし、まだまだ序の口。
更に年齢を増して、モグリではなくなる日が楽しみで仕方ない。
もしかすると、本楽曲を素直に名曲と感じられる方は、酸いも甘いも相当味わった大人なのかもしれない。
それでは、そんな本楽曲について、セクション毎に解説していこう。
イントロ
しっとりと優しく楽曲のテーマを奏でる、透明感のあるエレクトリックピアノ(キーボード)からスタート。
(※ちなみに、B’z非公認ベストアルバム「Flash Back-B’z Early Special Titles-」では、この冒頭部分がカットされて収録されている。アホみたいに雑な編集なので、こちらは聴かないことをオススメする。せっかくの世界観が台無しだ・・・。)
ゆっくりと弾き終えると、ひと時のブレイク。
そして、バンドインへ。
バッキングとメロディーの中間を奏でるかのように弾かれる松本さんのギターが楽曲を先導する。
楽曲の世界観が一気に変貌し、疾走感と緊張感が漂う。
メロ
そっと囁くように稲葉さんがボーカルイン。
初期の稲葉さん特有のハスキーな声質も相まって、楽曲の切なさや儚さ、緊張感がより一層と明確になっている。
デビューからおよそ2年。
徐々に表現力が増していき、ボーカリストとしての技術の向上が顕著であるが、まだまだ進化の過程に過ぎない。
磨かれていない無骨さを感じる。
ただし、この微笑ましさすら感じさせる様な無骨さが良い。
本楽曲の世界観や雰囲気をマイルドにし、ビター(深刻)になり過ぎない、聴きやすく、ほどよいテンション感にしてくれているからだ。
高度なテクニックを駆使して、感情表現全開で歌われた場合は、後味がビター過ぎて吐き出してしまいそうになるだろう。
ほどよい感情移入でなければ、楽曲全体を俯瞰で楽しむことは難しくなってしまう。
そして、Bメロセクションで隙間を埋めるように歌われるコーラスや、透明感のあるエレクトリックピアノを加えながら徐々に厚みを増して、加速しつつサビセクションへ。
サビ
少しだけ日が差し込むような明るさや爽やかさが加わるサビセクション。
ここで聴くことができる、初期の稲葉さん特有の優しく丸みのある高音域は大変貴重である。
間違いなく現在の稲葉さんには出すことができない、しっとりとした空気感を含んだ、耳触りが良い心地良さに溢れた独特な高音域である。
この高音域により、聴き手の耳にメロディーがスムーズに流れ込むことになり、ダイレクトに感情に訴えかけてくる。
そして、言わずもがな、現在の稲葉さんの高音域も大変貴重である。
研ぎ澄まされてクリアになった突き抜ける様な高音域は、無骨なハードロックテイストサウンドを中心とする現代のB’zにおいては必須である。
(なお、稲葉さん自身も自身の声質の変化を感じているようで、過去のインタビューで自身の声質の変化について語っている。)
若干話が外れてしまったが、メロセクションを含め、飾り気のない純粋さ際立つ稲葉さんのボーカルが、本楽曲をより一層と聴きやすく親しみやすい名曲にしてくれているのだ。
楽曲終盤の稲葉さんのアカペラが一瞬存在するのも、松本さんが自然とその要素が必要と判断したからだろう。
ギターソロ
突き抜けるようなロングトーンのチョーキングから始まるギターソロ。
お得意のビブラートを絡ませてメロディアスに奏でながらも、時折加わるピッキングハーモニクスが刺激的な響きとなり、ほどよい緊張感を感じさせる。
その後、ブリッジミュートを効かせた低音弦の上昇で疾走感やメリハリを加え、感情をこれでもかと込めた熱いチョーキングビブラートで弾き終える。
起承転結がハッキリとしている構成で、お得意のチョーキングやビブラートを多用した、松本印たっぷりの松本フリーク歓喜のギターソロだ。
えっ?速弾きがなくて物足りない?
たしかに一理ある。わからないでもない。
いわゆる10代〜20代のギターキッズ時代の私もそう思っていた。
せっかく疾走感と緊張感漂う楽曲なのだから、もっと過激に弾いても良いはずと。
ただし、年齢や経験を重ねるにつれて、楽曲が必要としているものは?聴き手に聴いてほしい場所、重きはどこなのか?と考えた場合に、速弾きは不要となる。
本楽曲における重き=メインは、松本さんのバッキングやギターソロではない。
先述から語り続けているように、無骨で飾り気のない、純粋さ際立つ「稲葉さんのボーカル」(及び、歌詞)である。
メインを邪魔する様なプレイは、楽曲全体をボヤかせてしまい、聴き手は何をメインに聴けばよいのかわからなくなり困惑してしまうのだ。
私の経験上、音楽における引き算ができるようになったり、引き算の美学を楽しめるようになるには、相当な時間が必要である。
楽曲が本当に必要としているフレージングを弾く松本さんを楽しめるようになるまで、じっくりと音楽ライフを楽しもう。
<まとめ>
冒頭でも語ったとおり、ビター味である本楽曲は、万人が楽しめるような楽曲ではないかもしれない。
しかしながら、多数のB’zファンから愛されていることからもわかるように、名曲であることに間違いはないのだ。
未聴の方は是非とも聴いてみてほしい。
どのように聴こえるだろうか?
私のように、記憶に残らない、ただの地味な楽曲に聴こえるだろうか?
その場合は、無理をして聴き続ける必要はない。
焦らず月日が経過してから聴いてみよう。
そして、ビター味を感じ始めて楽しめるようになればこっちのものだ。
徐々に変化する聴こえ方を存分に楽しもう。
ずっと苦いままなのになぜか美味しい、濁っているのに近くで見ると透き通るように美しい、正しい回答や良さなんて一生かけても導き出せない、常に考えさせられる味わい深い楽曲である。