Ryo’z on Guitarへようこそ。
本日は、3rdアルバム「BREAK THROUGH」の2曲目に収録されている楽曲、
「B.U.M」
を、自由に正直に語る。
B’zと愉快な仲間達の軍歌
本曲はB’zとしては非常に珍しい、英詞のラップで展開されるヒップホップ的なご機嫌なナンバー。
そして、収録時間も「1分26秒」と非常に短い楽曲であり、数あるB’z楽曲の中でもかなり異色を放っている。
ちなみに、タイトルの読み方は「ビー・ユー・エム」、もしくは「バム」。
(バムと呼んでいる人に出会ったことはないが・・・。)
駄作なの?捨て曲なの?
先述のとおり、本曲は英詞のラップであることに加えて、収録時間の短さから、ファンの間でも楽曲の評価については賛否両論である。
正直に言うと、聴き始めた当時の私も本曲だけを聴くために「BREAK THROUGH」に手をわざわざ伸ばさなかったし、聴いたとしてもBGM的に聴き流す程度であった。
決して嫌いでもないし、好きでもない。
そんな、なんとも微妙な存在。
しかし、その後にギターを弾き始めたことに伴い、私にとっては松本さんのギターを楽しめるような楽曲となったため、幾分好きになることができた。
(とは言え、わざわざ聴くほど好きになったわけではない。)
そして、何よりも楽曲自体がライブを想定しているかのような作風であるため、そもそもじっくりと聴いて楽しむような楽曲ではない。
落ち着いた空間でじっくりと一人で聴いて好きになるには、かなりハードルが高いということである。
大人数が集まったライブハウスで、汗をかきながら皆んなで歌って楽しむ。
そんなご機嫌な雰囲気の「スパイス」が必要な楽曲であるため、決して駄作でもなければ、捨て曲でもないのだ。
そもそも「B.U.M」って何?
ここまで、駄作だの捨て曲だのといった楽曲の評価について語ったが、そんなことは本曲においてどうだっていい。
そんなくだらない議論以前に、本曲にはB’zにとって、いや日本にとって非常に重要な存在価値がある。
そもそも、本曲のタイトルである「B.U.M」とは何か?
それは、「B’z Unreal Music」のそれぞれの頭文字を組み合わせたものである。
そして、「B’z Unreal Music」とは、かつてB’zが中心となって結成された「音楽制作集団」なのである。
B’zの二人だけでは実現できない音楽を実現させるために、松本さんの意向で結成された「B.U.M」には、アレンジャーやレコーディングエンジニア、ドラマー、ギターテクニシャン(ギターのメンテナンスや音作りに関するプロ)など複数人が所属していた。
言わずもがな「音楽制作集団」を結成したとは言え、B’zは変わらずに松本さんと稲葉さんの二人構成であり、あくまでも「B.U.M」の役割は、B’zの楽曲制作やライブのサポートにある。
表面上二人だけに思えたB’zは、当時上記のようなメンバーを固定化した上で、楽曲制作やライブを行っていたのである。
そんな「B.U.M」は、惜しくも結成から4年後の1994年に解散となるのだが、この優秀なメンバー達がおとなしく解散したわけではない。
ここからが驚きなのだ。
なんと解散後に、レコードレーベルである「VERMILLION RECORDS」を設立したのである。
(現在はB’zのプライベートレーベルとなっているが、かつては「織田哲郎」や「西城秀樹」、「B.B.クィーンズ」、「LOUDNESS」といった、そうそうたる有名アーティストが所属していた。)
今でこそB’z作品で当たり前のように見かける「VERMILLION RECORDS」は、「B.U.M」のメンバーを中心に設立されたのだ。
つまり、本曲は軍歌のような大切な存在なのである。
なお、歌詞のおおまかな概要は以下であり、本曲が収録されているアルバムタイトルである「BREAK THROUGH」に通づる部分がある。
「B’zとB.U.Mのメンバーが集まったライブを皆で楽しんで、ブレイクしよう!(突き抜けよう!)そうすれば、新しい何かを見つけることができるかもよ。」
イントロ
松本さんの爽やかに歪んだバッキングギターからスタート。
(ここまでは誰もまさかのヒップホップ的なご機嫌ナンバーだとは思うまい・・・。)
その後、ヒップホップではおなじみのDJスクラッチを合図にバンドイン。
引き続き、松本さんのバッキングギターが楽曲を先導する。
(しかし、打ち込まれたベースとドラムの音色がかなりデジタルチックで、あきらかにロックではないことを物語っており、どこかしら違和感を感じ始める・・・。)
メロ
ブレイクを挟み、大勢の声でご機嫌に唐突な「Everybody!」
おそらくライブであれば、ここで会場が一致団結する絶頂ポイントであろう。
しかし、一人で家などで聴いている場合は、テンションの差に置いてきぼりをくらい、あれよあれよと言う間に状況把握できないまま曲が進行していく悲しい事態に。
そんなことは知らん顔で、スティーブ・ヴァイを彷彿させるハモりを効かせた松本さんの合いの手ギターや、ボーカルコーラスを交えながら稲葉さんの軽快なラップが粛々と進行する。
サビ
松本さんのギターも少しずつ速弾きやアーミングプレイを交えて存在感を高めていき、そんな状況に触発されるように稲葉さんのラップも力強さを増していく。
楽曲のテンションは高まっていくばかりだが、英詞とラップの難易度が高く、唯一歌えそうなのは「Break it through!」の箇所ぐらいだろうか・・・。
なんか悲しい。。。
ギターソロ
サビセクションですでに存分に弾きまくっている松本さんだが、楽曲の終盤ではスティーブ・ヴァイ節を全開にさらに過激に弾きまくる。
つまり、変態的なフレージングというわけだ。
松本節はあまり感じられないので、松本フリークとしては楽しめないかもしれないが、松本さんにもこんな時代があったんだとニヤリとできる。
(当時のいつしかのインタビューで、ここ最近のお気に入りギタリストとして答えていたように、この頃の松本さんはとりあえずスティーブ・ヴァイが好きだった。後に共演することになるとは思ってもいなかったであろう。)
ちなみに本曲は、缶を蹴り転がるようなサウンドで終えるが、歌詞に登場するキックを表したものだろう。
幻の楽曲
B’zの音楽性の広さを実感させてくれるような楽曲ではあるものの、B’zとしては非常に珍しい英詞のラップであり、収録時間も「1分26秒」と非常に短いため、聴き手を選ぶようなハードル高めな本曲。
本曲を気持ちよく聴く事はなかなか難しいだろう。
しかしながら、本曲は良い悪いといった観点で評価すべき楽曲ではない。
本曲は、B’zにとっての大事な仲間に対する想いが詰まった楽曲であり、何よりも、幻の音楽製作集団「B.U.M」の軍歌である。
「B.U.M」が解散してしまった今、おそらく今後もライブ等で聴く事はできない。
そういった点を意識することで、聴こえ方が大きく変わってくるはずだ。
未聴の方にはもちろん聴いていただきたいし、苦手意識を持っている方も以上を踏まえた上で、改めて本曲を聴いてみていただきたい。
自然とテンションも上がり、異色と思える本曲が、少しだけ特別な楽曲に聴こえてくるようになるはずだ。