Ryo’z on Guitarへようこそ。
本日は、3rdアルバム「BREAK THROUGH」の9曲目に収録されている楽曲、
「今では…今なら…今も…」
を、自由に正直に語る。
隠れきれていない、隠れた名曲
別れた恋人に対する男性の未だに残る想いを歌った、ミディアムテンポのバラード。
言わずと知れた隠れた名曲であり、隠れた名曲ながらもかなりの市民権を得ている本曲。
(少しややこしいタイトルを間違えずに言える人は、ファン以外になかなかいないが・・・。)
通称、裏ベストと呼ばれる「B’z The “Mixture”」にリメイク版が収録されたことで、初期のアルバム収録楽曲ながらも多くの人々に知られることとなった。
ベスト盤への収録に恥じない高いクオリティーである本曲は、どこか切ないオリエンタルな雰囲気を漂わせながらも、穏やかで優しいキャッチーなメロディーで溢れているため、耳馴染みが良く誰しもが楽しめる作品となっている。
B’zビギナーであれば優先的に聴くべき楽曲であり、むしろ必聴の楽曲と言える。
また、原曲となる本曲においては、初期の稲葉さん特有のハスキーなボーカルと拙い表現が、楽曲の持つ「切なさ、儚さ」にマッチしていると感じるため、私としては断然リメイク版よりも原曲が好みである。
リメイク版しか聴いたことがないといった方には、ぜひ原曲である本曲を聴いてみてほしい。
荒削りながらもピュアな表現に満ちた音が、逆に新鮮に聴こえるはずだ。
イントロ
木琴と鉄琴の間のようなシンセサウンドで奏でられる、どこかオリエンタルな雰囲気漂う音階が取り入れられたメロディーからスタート。
その後、シンプルなドラムのフィルを合図に、松本さんの心地良いロングトーンのリードギターが始まる。
じっくりと丁寧に演奏されるリードギターは、チョーキングやビブラート、間(タメ)が絶妙に合わさり、これこそ松本孝弘と言わんばかりの絶品プレイである。
メロ
穏やかな曲調に合わせるように優しく稲葉さんがボーカルイン。
初期の稲葉さんならではのハスキーな声質が心地良く響き、歌詞の儚い世界観をより一層感じることができる。
枯れたサウンドのアコースティックギターのアルペジオも、穏やかながらもどこか悲しげに響いている。
そして本曲における目玉が始まる。
なんと、Bメロセクションから「松本さんのコーラス」を聴くことできるのだ。
松本さんのコーラスの代表作と言えば、別曲「FIREBALL」が有名どころだが、リードボーカルの稲葉さんにハモるように歌われるコーラスを聴けるのは大変貴重だ。
ソロアルバム「KNOCKIN’“T”AROUND」でも聴くことできる、ハスキーで味のある渋い歌声はこの頃からすでに健在で、稲葉さんの存在感に負けず劣らずである。
サビ
穏やかな雰囲気を残しつつも、熱を増したサビセクション。
Bメロセクションから続く松本さんのコーラスは、更に比重を強めており、サビセクションのほとんどの箇所で聴くことができる。
稲葉さんに寄り添うように歌う松本さんの歌声を聴くと、どこか微笑ましい気持ちにもなり、いつもよりも強く「B’z」を感じることができる。
特に、ギターソロ明けのブレイクで聴くことができる二人の歌声は必聴だ。
そして、終盤のサビセクションにおける最後の稲葉さんの力強い歌い上げは圧巻の一言。
現在の稲葉さんと比べると、力技とも思える拙い技術で放たれた歌声は緊張感に満ちており、歌詞の儚い世界観を感動的に表現している。
現在の稲葉さんにはない、ソフトでマイルドな高音域を聴けるのは貴重である。
ギターソロ
終わりが見えないような長さのロングトーンのチョーキングからスタート。
サスティナーなどを使わず、一度のピッキングでこんなにも伸びるものなのかと驚くばかりのロングトーンだ。
その後もチョーキングを主軸にしたゆったりとしたフレージングで展開され、後半にはメロディアスなプレイも聴くことができる。
最後の一音も儚く響き、耳に残る余韻がたまらない。
ギターソロに限らず、本曲における終始歌心に溢れたプレイは、速弾きやスケールに頼りがちなギター初心者には絶好の教科書である。
なかなか「泣いてくれない」ギターの悩みを解決する大きな手助けとなってくれるはずだ。
今から…
穏やかで優しいキャッチーなメロディーと、切なくも心地良いオリエンタルな雰囲気で非常に聴きやすい本曲は、誰もが楽しめる安心の一曲だ。
私も一聴で好きになることができたし、聴けば聴くほど魅力が増していく底知れないクオリティーに驚き続けている。
少し地味にも思える楽曲ではあるが、初めて聴いた当時のじんわりとした衝撃は忘れられない。
うわぁ〜いい曲だ・・・なんて儚くて美しい曲なのだろう・・・なぜこんな良質な楽曲をシングルにしないのだろう・・・、様々な思いを抱きながらじっくりと何度も楽しんだものだ。
しかしながら、やはりB’zの音楽性の幅広さといったら壮大である。
ロックしてるばかりが能じゃないだろう。
ロック以外にもこんなにも絶品な楽曲があることを、ぜひとも日本、いや、世界中の人々に知ってもらいたい。
未聴の場合は、「今では…今なら…今も…」ではない。
ぜひ、「今から…」聴こう。