Ryo’z on Guitarへようこそ。
本日は、2ndミニアルバムである、
「WICKED BEAT」
を、自由に正直に語る。
<はじめに>
このブログは、B’zの作品についてギタリストのRyo’zが、
・作品の概要 ・世界観 ・音楽性 ・聴きどころ ・稲葉さんのボーカル ・松本さんのギター ・イントロ、メロ、サビ、ギターソロ等のセクション毎の解説 等々・・・
B’zファンとして、ギタリストとして、そして音楽リスナーとして。
自身の経験を踏まえて解説、自由に考察しながら正直に語るブログです。
限定発売から一般発売へ
「WICKED BEAT」(ウィキッド・ビート)は、1990年6月21日にリリースされた、B’zの2作目のミニアルバムである。
詳細については後述するが、デジタル要素を強めたダンサブルサウンドで、既存曲を英詞にリメイクした楽曲を、曲間が一切ないノンストップで収録するという、実験的な作風である本作は、数多いB’z作品の中でも異色の作品である。
この頃のB’zと言えば、4thシングル「BE THERE」が、初のオリコンチャート初登場10位以内にランクイン 。(初登場第7位)
そして、5thシングル「太陽のKomachi Angel」で、シングル・アルバムを通じて初のオリコンチャート1位を獲得する等、かつてない史上最高の記録を達成していた。
現代の音楽シーンにおいて、今や当たり前のように「モンスター」として存在しているB’zは、この辺りから私たちがイメージする「モンスター」へと変わり始めていたのだ。
そんな当時のB’zにおいて、いわゆる「売れ線」とは相反するような作風となるミニアルバムのリリースは、作風と共に実験的でものであったと思われる。
これまでB’zは5作のミニアルバムをリリースしているが、その中でも本作を含めた初期の2作品については、
・英詞(一部、日本語の箇所あり)
・シンセサイザーの打ち込みやサンプリングを全面に打ち出した、強烈なデジタル要素とダンサブルサウンド
・B’zとしては長めの収録時間となる楽曲の収録(7分を超える楽曲等)
・好き放題、お遊び要素を詰め込んだ自由なスタンス
などなど・・・。
聴き手を度外視するかのように攻めた作風であり、実験的な要素が強い作品であった。
しかも、本作については、前作のミニアルバム「BAD COMMUNICATION」と異なり、新曲は収録されていないという更に挑戦的な内容。
収録曲すべてが、既存曲のリメイクバージョンであった。
正直、この作品のリリースについては、多少の葛藤があったと思われる。
現に当初、本作については「限定盤」として発売する予定だったそうだ。
およそ2年間の鳴かず飛ばずであった期間を経て、ようやく掴み始めた成功。
それを手放すこととなる可能性を考えると、聴きたい人へ、熱烈なファンへ販売する限定盤という「保守的な考え」に至るのは自然なところだ。
しかしながら、それでも発売直前に一般発売へ踏み切る「進歩的な考え」に至ったのは、想定していなかった前作「BAD COMMUNICATION」のヒットがあったからこそ。
実験的な「BAD COMMUNICATION」の予想外のヒットがなければ、「BE THERE」の10位以内のチャートインも、「太陽のKomachi Angel」のチャート1位獲得もなかったかもしれない。
「BAD COMMUNICATION」がヒットした当時の事を振り返り、松本さんは「読みが違った。あんなにヒットするとは思わなかった。」と雑誌のインタビューでコメントしている。
そんな読めないヒットに向けての一般発売。
その結果、前作「BAD COMMUNICATION」の販売数を僅差で超えることはできなかったものの、見事100万枚を超えるミリオンヒットを記録。(オリコン調べで累計111.1万枚)
今後に繋がる記録的なヒットとなった。
TM NETWORKの弟分からの逸脱
当時のB’zと言えば、「ロック」(アナログ)と「打ち込み」(デジタル)の融合を目指したそのサウンドから、良くも悪くも「TM NETWORKの弟分」と比喩されることが度々あった。
もちろん、TM NETWORKのサポートギタリストとしてB’z結成以前から活動していた松本さんの存在も大きく関係している。
膨大なシンセサイザーを操りながら、数多くの名曲を生み出す小室哲哉の姿を見て多大な影響を受けた松本さんが、TM NETWORKを彷彿させるサウンドの作品を生み出すことは自然なこと。
むしろ意識していたくらいだろう。
特に前作のミニアルバム「BAD COMMUNICATION」の作風には、TM NETWORKの色が濃く現れていた。
言わずもがな、これが悪い訳ではない。
先人の知恵を生かして制作された、リスペクトの気持ちが存分に込められた至極の名作である。
しかしながら、オリジナリティの面が欠けてしまうことは否めない。
次のステージとして、オリジナリティを出すことが課題であったことは間違いないだろう。
そんな折にリリースされた本作には、TM NETWORKの弟分から逸脱しようと奮闘するB’zの姿がある。
「松本孝弘」という存在感を高めるかのように、より高度で過激なギタープレイを盛り込み、ギターサウンドを強調させているのだ。
その結果、B’zの二人を取り囲むデジタルサウンドな伴奏と差別化を図ることに成功している。
B’zの本来の姿「ボーカリストとギタリストのユニット」を強く意識することができるのだ。
とは言え、完全に弟分を逸脱している訳ではない。
その土俵の横綱は強すぎた。
圧倒的なサウンドクオリティを誇るTM NETWORK、そして小室哲哉と純粋に比較すれば、どうしても弟分になってしまう。
比較することがナンセンスではあることは承知しているものの、同じ土俵に立つ以上、どうしても比較してしまうし、意識してしまう。
それでも、独自のオリジナリティを感じる本作は、実験的な作風ではあるものの、B’zファンであれば多少なりとも聴きやすく、幾分「納得」できる形となっているはずだ。
「こんなのB’zじゃない!」と感じている方は、是非、松本さんのギタープレイ・ギターサウンドに耳を傾けてB’zを「感じて」ほしい。
アルバム収録曲ランキング
本作の収録曲数は「4曲」。
どのように本作を聴くべきか、どの曲から聴くべきか迷っているB’zビギナーに向けて、本作の聴き方についてお教えする。
まず先述のとおり、本作は全体を通して現在のB’zとはかけ離れた、デジタルなサウンドを中心とした作風。
想像以上にデジタルサウンドを多用しており、実験的な要素がふんだんに盛り込まれた作品である。
言わずもがなハードロック路線の骨太なB’zを期待して本作を聴くのはご法度。
ただただ肩を透かして、低評価の中で落胆するだけである。
「ロック」(アナログ)と「打ち込み」(デジタル)の融合を目指していた初期B’zが、好き放題・やりたい放題にお遊び要素を盛り込んだ内容は、当然のことながら人によっては聴き辛さを感じるだろう。
素直に本作を楽しむためには、様々なジャンルの音楽を聴いて耳を肥やし、且つ、B’z=ハードロックという固定概念を捨てることが必要であり、人によってはかなりの時間を要する。
また、本作だけを繰り返し何度聴き続けても、素直に楽しむようになることができないところが難しいところだ。
私自身も本作を素直に楽しめるようになるまでに、実に様々なアーティストの音楽を聴いて耳を肥やしてきた。(初めて聴いた時は、駄作なのか?と落胆しそうだった・・・。)
初めから本作を素直に楽しめる方は少なく、努力にも似た経験が必要であり、無理に初めから楽しむ必要はない。
徐々に耳を肥やして、スムーズに音が耳に流れ込んでくる日を、体が勝手に動き出す日を期待して、じっくりと何度も何度も聴いていただきたい。
以上を理解いただいた上で、私は以下の順で聴くことをオススメしたい。
※曲名横の( )内の数字はアルバム収録番号。また、曲名下のリンクは、楽曲の個別レビュー。
1.I Wanna Dance Wicked Beat Style(1)
【B’z】「I Wanna Dance Wicked Beat Style」ってどんな曲?B’zを愛するギタリストRyo’zが解説。自由に【考察】正直に語って【レビュー】
2.Komachi-Angel Red Hot Style(2)
【B’z】「Komachi-Angel Red Hot Style」ってどんな曲?B’zを愛するギタリストRyo’zが解説。自由に【考察】正直に語って【レビュー】
3.Bad Communication E.Style(3)
【B’z】「Bad Communication E.Style」ってどんな曲?B’zを愛するギタリストRyo’zが解説。自由に【考察】正直に語って【レビュー】
4.Lady-Go-Round “W-40” Style(4)
【B’z】「Lady-Go-Round “W-40” Style」ってどんな曲?B’zを愛するギタリストRyo’zが解説。自由に【考察】正直に語って【レビュー】
以上である。
「おいおい!ただ収録曲順に並べただけじゃねーか!」とヤジを飛ばされそうであるが、これは怠慢でも妥協でも何でもない。
本気で選んだ結果だ。
意図せずに収録曲順になってしまっただけである。
選曲基準は、あくまでも私自身が感じる「わかりやすさ」。
メロディーのわかりやすさ(キャッチーであるか)や、曲全体の完成度(まとまり)を意識した基準だ。
もちろん、選曲基準を変えれば優先順位は前後するし、人それぞれ、B’zファンそれぞれの選曲基準があるため、これは一つの参考として捉えてほしい。
これからB’zを聴き始める方や、B’zファンであっても本作の聴き方がわからずに困っている、そんなビギナーの手助けとなれば幸いだ。
なお、上記にも記載しているとおり、収録曲を個別に詳しく語っているため、気になる楽曲があれば是非とも参照いただきたい。
さぁ、松本さんの極上ギタープレイと稲葉さんのハイテンションなボーカル、そして色鮮やかで派手なダンサブルサウンドに耳を傾け、稲葉さんに負けないほどに腰を振りながら本能のままに本作を楽しもう!